日本のエネルギー・トランジションに向けて「東」と「西」を結ぶ

27/02/2025

昨年ソシエテ・ジェネラルがグローバルロードショーの一環として開催した「ポジティブ・インパクト・デー」の東京会場では、日本の脱炭素化政策と国際的なパートナーとしての役割について、最新の動向を踏まえた活発な議論がなされました。

日本のエネルギー・トランジションに向けて「東」と「西」を結ぶ

昨年ソシエテ・ジェネラルがグローバルロードショーの一環として開催した「ポジティブ・インパクト・デー」の東京会場では、日本の脱炭素化政策と国際的なパートナーとしての役割について、最新の動向を踏まえた活発な議論がなされました。

日本はグリーン・トランスフォーメーションの面で大きく前進しており、2023年末時点で設置済みの再生可能エネルギーが128ギガワットを超えています。再生可能エネルギーは2023年の国内総発電量の25%超を占め、前年の22.7%から3%ポイントも拡大しました。 

ただ、最近は金利の上昇や新政権の発足など、政治の混乱とマーケット変動の時期に入り、脱炭素化の課題をめぐっては新たな不透明感が生じています。   

このような背景から、昨年10月の「ポジティブ・インパクト・デー」では、お客さま、政府要職者、専門家の方々が一堂に会し、日本の急速な進展から得られた教訓とエネルギー・セクターの今後の道筋について考察しました。

議論を通じて、可能性を広げる3つの実現要因、すなわち安定した政策環境、資金へのアクセス、国際的パートナーの役割の重要性が改めて浮き彫りになりました。

ソシエテ・ジェネラルの日本におけるグループ・カントリー・ヘッド、ブルーノ・ゴソーグはこう指摘しました。「日本はずっと、協調的で長期的なグリーン経済への取り組みが、何十億ユーロもの低炭素技術投資を呼び込めるということを実証してきました」。そして、「新しい知見や洞察力をもつ多くのお客さまや政策立案者、専門家の方々を結びつけることにより、日本のグリーン化の理念が次のレベルへと進めるよう寄与できれば、これほど光栄なことはありません」と述べました。

カンファレンス冒頭では、経済産業省GXグループ長の龍崎孝嗣氏に基調講演の中で、日本の政策課題についてお話しいただきました。

日本は、グリーン・トランスフォーメーション(GX)を政策の基軸に据え、それに特化したGX推進機構を設置するとともに、2030年までに150兆円の脱炭素投資を行うとしています。昨年10月に就任した石破茂首相は、12月の新たなエネルギー基本計画案の発行に当たり、グリーン・トランジションの加速を明言する当該政策を継承しました。 
特に注目すべき目標は、2040年までに国の電力構成に占める再生可能エネルギーの割合を最大50%に引き上げ、2035年までにガソリン車の新車販売を段階的に禁止、2028年までに炭素賦課金を導入、といったものが含まれます。 

また、トランジション資金の源泉としての債券市場の活用では、政策支援も重要な役割を果たしています。日本は2024年、クライメート・トランジション・ボンドを売り出した世界初の国債発行体となり、2月に8,000億円を調達しました。

債券市場の詳細については、財務省理財局国債企画課長の佐藤伸樹氏に加え、経済産業省GXグループ環境金融室室長の鬼塚貴子氏、東京大学未来ビジョン研究センター教授の高村ゆかり氏が概説しました。

当セッションのモデレーターは、ソシエテ・ジェネラル証券株式会社の投資銀行本部 資本市場部長である秋葉誠道が務めました。

サステナブル・ファイナンスを拡大させる

日本は、グリーン・トランジションのコストに対処するためには民間部門の参加が欠かせないと認識しています。そのためカンファレンスでは、欧州のいくつかの重要な教訓を含め、サステナブル・ファイナンスの最新動向に対する高い注目度が見られました。

GX推進機構の財務・サステナビリティ推進担当理事 高田英樹氏からは、2030年までに30兆円の民間部門投資を求める日本政府の脱炭素化ロードマップの概要をご説明いただきました。

在日フランス大使館における経済公使 兼 日韓地域経済責任者のラファエル・ケレール氏は、明確なタクソノミーと一貫した規制がサステナブル活動に向けた資本のガイドラインとして有効である、という欧州の考え方を明示されました。

気候変動を扱うシンクタンクInfluenceMapの東アジア・ディレクター、長嶋モニカ氏は、脱炭素化をグローバルに加速させることが急務であると述べられました。

この議論のモデレーターは、ソシエテ・ジェネラルのサステナブル&ポジティブインパクトファイナンス アジア太平洋地域責任者であるポール・アントワン・ティボが務めました。またティボは、公平な競争環境の重要性、ブレンデッド・ファイナンスの役割、及び投資を呼び込み、グリーンテクノロジーのイノベーションを支援するための政策の一貫性の必要性についても取り上げました。

イノベーションを支援する

この日の最後の考察では、グリーンテクノロジーに多くの投資を行っている企業3社からの知見が得られました。

電力大手である株式会社JERA財務開発部ストラクチャードファイナンスユニットのユニット長、宮川智紀氏は、既存のエネルギー企業が直面する課題と機会について概説しました。

JERAは2024年、「脱炭素社会への移行(サステナビリティ)」「手ごろな価格を実現できる経済性(アフォーダビリティ)」「エネルギーの安定供給(スタビリティ)」の実現に向けた同社の理念と、ゼロ・エミッション目標を統合する新たな成長戦略を発表しました。目標の中でも特に、2035年までに再生可能エネルギー発電容量を20ギガワットに、水素アンモニア取扱量を700万トンに増やすことをめざしています。 

カナディアン・ソーラー・プロジェクト株式会社におけるプロジェクトファイナンス-M&Aディレクター、ハビエル・マルティネス氏は、クリーンエネルギーの開発事業者にとって安定した市場価格と規制の明快さが何より重要であると強調しました。これらの環境整備により、同社は日本で多数のソーラーおよび蓄電プロジェクトのポートフォリオを構築し、さらに多くの計画中案件も抱えています。

日本のグリーン・トランスフォーメーションへの取り組みは、ヘキサ・エネルギーサービス合同会社(HES)などの新規参入企業も惹きつけており、同社は2024年5月に実施された日本初の長期脱炭素電源オークションで11件の蓄電プロジェクト、計342メガワットを獲得しました。すでに第一号の蓄電プロジェクトとなる福岡県田川市の30メガワット施設の建設は11月に始まっています。 

HESのエグゼクティブマネジャー、渡邊(シャー)優子氏には、国内電力網のトランジションを支援する蓄電・電力貯蔵システムの投資事例をご紹介いただきました。HESは世界全体で1.8ギガワット時の蓄電量を管理する、アイ・スクエアド・キャピタルのヘキサ・リニューワブルズ・プラットフォームの子会社です。

議論は、日本のエネルギーミックスにおけるサステナビリティ(持続可能性)、アフォーダビリティ(経済性)、スタビリティ(安定性)をバランスさせる革新的ソリューションの必要性を強く印象づけました。ソシエテ・ジェネラル銀行東京支店エネルギープラス部長の小谷慎也、及びソシエテ・ジェネラルのアジア太平洋地域エネルギープラスグループ、マネージングディレクターのセドリック・シャテルのリードによって活発な意見交換がなされ、カンファレンスはソシエテ・ジェネラル証券株式会社代表取締役社長、島本幸治が閉会のご挨拶を申し述べて終了しました。

ソシエテ・ジェネラルは、50年以上にわたり日本のお客さまとともに歩んでまいりました。ここ数年では、初の実用規模の洋上風力プロジェクトや、自然電力株式会社向けの、新たな料金体系に基づく長期バーチャルPPA(電力購入契約)を基軸とする初のソーラー開発など、多くの革新的なエネルギー転換プロジェクトを支援しています。

2024年「ポジティブ・インパクト・デー」東京会場では、日本の経済発展の次のフェーズを支援するためにどのような要素が必要か、多くの斬新な視点やアイデアが提示されました。ご登壇いただいた皆さまに対し、貴重な対話の時間を共有いただいたことにソシエテ・ジェネラル一同、心より感謝申し上げます。

1www.isep.or.jp/en/1529/
2www.reuters.com/sustainability/climate-energy/japan-targets-40-50-power-supply-renewable-energy-by-2040-2024-12-17/
3japan.influencemap.org/policy/GX-Green-Transformation-5477
4www.jera.co.jp/en/ir/ir_news/20240516_1917
5www.linkedin.com/company/hexa-energy-services/posts/

英文はこちら、フランス文はこちらをご覧ください

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