
グローバルマーケットと日米金融政策の見通し
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部長兼チーフエコノミストの劔崎仁とマルチアセットストラテジストの齋藤勉は先日、グローバルマーケットと日米の金融政策および金利の見通しについて見解を共有した。
ゴルディロックスを織り込む市場のヘッジ手法とマネーフローの重要性
現在の環境では、リスクオン姿勢の強まりと金融緩和期待の相互作用により、「1ゴルディロックス」シナリオが形成されつつある。これは、リスク資産の堅調なパフォーマンスを支えるのにちょうど良い条件が整っていることを意味する。
市場を動かす主な要因
• アメリカ経済の堅調さがリスクオンを刺激:アメリカ経済は依然として底堅く、リスクオンの動きが強まっている。景気減速への懸念は和らぎつつあり、株式市場への信頼感の継続を支えている。
• 金融緩和によるインフレ抑制への期待が高まる一方で、リスクも高まっている:アメリカ経済が好調でインフレ率も安定していることから、連邦準備制度(以下Fed)による利下げの可能性が高まっている。しかしながら、市場の過熱、景気悪化、そして高インフレの持続により、株価と債券価格が同時に下落するリスクがあるため、ヘッジ戦略の採用が推奨される。
マネーフローの変化
• 外国人投資家は日本株への信頼を維持:日本株市場の最近の上昇は、主に日本独自の要因によるものである。特に海外投資家が日本の構造変化を評価しており、これが日本株への外国人投資流入の増加につながっている。
• 欧州投資家による米ドルヘッジの増加:市場では「アメリカ離れ」が生じるリスクを指摘されるものの、米国債周辺のマネーフローに大きな変化は見られない。しかし、特に欧州投資家による米ドルヘッジ割合が高まっている可能性があり、これがドル安・ユーロ高の要因となっている。
日米金融政策・金利見通し
米国:雇用統計により9月の利下げの可能性が高まっている
インフレ率と企業利益率が安定していることに加え、雇用統計も鈍化していることから、Fedによる9月の利下げの可能性が高まっている。しかし、労働市場の底堅さが再び確認されれば、Fedは利下げを一時停止し、より慎重な姿勢を示す可能性がある。
日本:10月の利上げを予想
日本銀行は、10月に政策金利を0.75%に引き上げ、その後も半年毎に利上げを実施すると予想している。この見通しに影響を与える要因としては、下記の点が挙げられる。
• Fedが9月に利下げに踏み切ったとしても、再び米労働市場が回復する可能性も残っていることを考慮すると、米国経済が日銀の利上げを阻む可能性は低い。
• 現在のインフレ率は、長期的な期待インフレ率の高まりとともに、サービスへの価格転嫁度合いも徐々に高まっていることを示している。
• 日米関税交渉の合意により、一部関税が引き上げられたが、自動車の波及効果も含めれば、GDPへの押し下げ効果は0.2%程度改善した。また、他の主要国も合意に至り、不確実性が低下したことで、設備投資や来年の春闘を後押しする可能性がある。
• 秋の経済対策は、現金給付やガソリン税の暫定税率撤廃を含む可能性があり、内需を下支えすると期待される。
• 経済対策の発表と利上げを同時に行うことは難しいとの指摘があるが、利上げの延期は、日米関税交渉の合意が覆され、日本経済により悪影響を及ぼす可能性も否定できない。
英文はこちらをご覧ください。
1 ゴルディロックス経済:経済が過熱も冷え込みもせず適度な状況にあること

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ソシエテ・ジェネラル、ジェローム・二ダムを アジア太平洋地域最高経営責任者に任命
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